入居してから

初めての一人暮らしは快適な滑り出しを見せました。買った電化製品もちゃんと稼動するし、学校から遠すぎるわけでもない。それに何より好きな時に好きな事をして誰にも小言を言われないと言うのは、18歳のひよっこには何よりも自由を感じさせるものでした。

入居後数日して風呂場の換気扇が回っていないことに気づき、不動産屋に連絡した事があります。その時の対応も早く、その日のうちに修理しに来てくれました。ただし用事があって外出しなければいけない時間の訪問だったので、合鍵で不在時に勝手に入ってもらいました。鍵は不動産屋か管理会社の物です。盗まれて困るような物は何もなかったので別にいいのですが、世の中が物騒になった今なら考えられない事です。因みに帰宅してみるともちろん何も取られていませんでしたし部屋の中の物に触った形跡もありませんでしたが、土足で修理したと見えて、バスタブの中にしっかり靴底の溝が見えるような足跡がついていたのにはぎょっとしました。

私はいずれ実家を出て自炊する日が来るだろう事を考えて、引越す数年前から時々日曜の午後などに料理をしていました。適当な物を適当に突っ込んだ怪しげな創作料理です。一人暮らしを始めてからも創作料理は続き、劇辛カレーにみかんの缶詰を入れたり、インスタントラーメンの汁とマカロニを合わせてみたりと、何を考えているか分からない料理を次々に生み出していました。

ただし日曜の午後にのみゲテモノを食べるのと毎日食べるのとではやはり違います。一ヶ月ほどして冷静になり「やっぱり普通の物を普通に作って食べたほうがおいしい。」と当たり前の事にやっと気付き、それ以降は普通にごはん、味噌汁、おかず、というメニューに落ち着きました。パスタも好きなのでよく作りました。インスタント食品は身体に悪いので控えるようにしました。ほぼ毎日自炊していたし、色々なレシピを読むようにもなったおかげで、今ではそこそこの物が短時間で作れます。

風呂場の換気扇の事意外で不動産屋に連絡した事は出て行く時まで一度もありませんでした。今思えば部屋探しの時はカモられたと思うし、空き部屋の郵便受けの中に鍵がぶら下がっているシステムもどうかと思うし(隣の部屋が空き部屋になった時試しに手を入れてみたらやはり鍵がぶら下がっていました)人の留守に合鍵を持った業者が土足で風呂場に入ると言うのもなんだかまずい気がしますが、何もかも始めてだったため全て「そういうもんなんだ」と思っていました。それで本当に何事もなかったのだから、やはり平和だったのだと思います。ほんの十年前の事なのに、まるで大昔みたいです。